痛快ハートフル時代劇映画
戦国の世、羽柴秀吉による天下統一がなされようとしている。
現在の埼玉県北部の行田市にあたる場所に忍城(おしじょう)はあった。
湖の真ん中にあるこじんまりとした城である。(現在は、既に湖はない)
成田長親(なりたながちか)は城主のいとこにあたり”のぼう”と呼ばれ、領民に親しまれていた。
「のぼうの城」のストーリー
”のぼう”は”でくのぼう”の意味である。(以下ネタばれです)
この人、まったく空気が読めない。野村萬斎演じる成田長親はズレまくっている。
石田三成ひきいる2万の軍勢が北条方である忍城(おしじょう)に攻め入ろうとしていた。
忍城(おしじょう)たったの500である。レッドクリフ並みである。
皆、泣く泣く、圧倒的な軍勢の前、開城をしようとした、その時…
闘いまする
と突然言う”のぼう”。城主をはじめ、忍城(おしじょう)の全ての人が、驚き慌てふためく。降伏は当然であり、誰もがそう思っていた。佐藤浩市演じる部下であり幼馴染、正木丹波守利英は言う
おまえは子供か?辛抱しろ
いやだ、と反発する”のぼう”。
空気を読まない心優しき武将
その理由が
武力あるものが武力ないものを圧迫し、知あるものが知なきものを引きずりまわす、そんなことがあっていいものか
誰もが(空気を読んで)言えない、その真実、そのセリフをあっさり言ってのける”のぼう”。まさにデクノボウ、バカ。KY。関西で言うアホ。
主題歌がエレファントカシマシ「ズレてる方がいい」。
温かいキャラクターの個性
彼だけではない。それぞれの人物が愛すべきズレ方をしている。
榮倉奈々演じるヒロイン、甲斐姫。彼女は、”のぼう”にホレている。
オテンバ娘。百姓の女が城の侍に犯された事に腹をたて、彼女が槍で処罰してしまったという出来ごとがある。まさに空気を読めない剛毅っぷり。姫をかばい諍いを収めたのが”のぼう”である。それ以来、姫は”のぼう”が大好きなのである。
戦国の世に生きた一人の武将と民衆の明るさ
”のぼう”は姫の気持ちに気づいていながら、ひょうひょうと知らぬふり。本当は、彼も姫に惚れぬいている。しかし、それを表に出さず、道化を演じ切り、百姓や部下を守り切る”のぼう”。観るものは彼に魅了されずにはいられない。
水攻めのシーンは、先の震災を想起させ身ぶるいしてしまう。しかし、それが映画の狙いなんだろう。人々が絶望しつつも、諦めない何度も立ちあがる明るさと強さ。監督は「ジョゼと虎と魚たち」の犬童一心。人物描写になんとも温かい熱がある。