どちらがより首相に相応しい顔立ち?

どっちがリーダー向きかそうでないか、生まれつき決まってるんですって!?

不愉快な現実が書いてある本?

橘玲『言ってはいけない~残酷すぎる真実~

本の帯に

遺伝、見た目、教育に関わる「不愉快な現実」

とありますが

細い顔と太い顔、どっちがリーダー向き?!橘玲『言ってはいけない~残酷すぎる真実~』を読んだ
橘 玲さんの新書 物議をかもしている

思ったより不愉快ではないでした。売るための煽り文句ですな。

世の中のタブー視されていること(主に差別意識)をこれでもかこれでもか、という事例を挙げています。その裏付けを豊富な文献などのソースをもとに述べられている。

主に海外、アメリカさまの事例ばかりですが(日本のを挙げたら出版は不可能でしょう)

やっぱりアマゾンレビューは物議を

Amazonのレビューは、煽っただけあり、賛否両論で物議をかもす。批判意見には

作者自身の考えや手足で調べたものがない いろんな文献の寄せ集めだから許すまじ

というのがありますが(フィールドワーク的な社会学は別として)文系論文というのは基本的にそういうものです。第一次第二次文献をいかに拾ってきて原文を読んで引っ張ってくるか。それをどう上手いこと組み合わせで結論を出すか、というのが正式なアプローチなんです。だから、その批判はズレているのですな。

内容はすべて「遺伝」についてです。遺伝という科学的なことを扱っているから科学評論かと思いきや、文献はデータによる推論なんだから、文系の評論、新書なんですね。

人が黙して語らないタブーにきりこんだ

薄々知っていた。なんとなく気がついていた、皆知ってるけど口に出さない、あのこと、あのこと。

公に言ったりしたら差別だと言われ糾弾されそうだから、黙していること、それを裏付け文献や理論を集めて論じた。

それだけで、この本の意義はあるのです。悪趣味だという意見もあるでしょうが。書籍は売るために出版するのだからそれでいいのです。ゴシップ報道や雑誌の悪趣味に人はお金を払うのだから。真面目な利他的な論文には一般人はお金出してまで読まないですよ。週刊誌じゃないから、その悪趣味を新書の風体に仕上げる必要がある。それなりの論理性や論拠が必要になる。丁寧に書かれていて、新書であるための基本要件はクリアされています。

扇情的な題名やいささか勢いのある強引な論調は、ちゃんと「売る」ための戦略を取っているのだから「世の中のためにならない有害な図書だ!」とレビューがいくら騒いだところで作者と出版社がほくそ笑むだけでしょう。

あの感情、あの感覚の原因が分かった

けっこう面白かったです。

不愉快と銘打っているわりには、私はそんなになりませんでした。

むしろ、なるほど、全部、脳と遺伝子のせいなんや~と割りきれました。

母や私が発達障害「ぎみ」とわかったことで非常にほっとしたんです。以前からなんとなくそうかな~と。

色々やらかした原因がそこにあるのか、と。(そればっかりのせいではないですが。努力不足ももちろんある)

原因がない「変」なことがあれば、不気味じゃないですか。

古今東西、人間社会で悪いことや突然変異の異質なことがあれば魔女だの呪いだの祟りだの言ってたわけです。(今でもそういうことを言う層はいます)

自分のアトピーが奇病だ、ステロイドでしか直せないと思っているときは、ほんと、なんの前世の報いかと悩んでいました。他人に「不潔だから心がけが悪いから墓参りしないから」と言われるたびにそのせいかそのとおりかと落ち込みました。

しかし、ビタミン剤を飲んだら改善して、あ~私は生まれつきこういう体質だから、この食事やビタミンを補完したら治癒するじゃないか。報いや祟りでも何でもないやん、と溜飲が下がったのでした。時代が変われば、原因不明なものも解明されて、何かしらすっきりするもんです。

郵便ポストが赤いのも…全部遺伝子のせいか!?

この本はなんでもかんでも、遺伝子に原因を求めている。

そこは徹底していて、そこんとこ偏っているなあ、と思って読んだ方が腹立たないですみます。実際少しイラッとなる記述が一杯あります。

例えば、恋愛、誰かを好きになる原因

「この人優しいし、ハンサムだわ」
「この娘といるとホッとする。ひとめぼれしたかも。忘れらない…

という当然の感情が、この本のバイヤスにかかると

「私の遺伝子を残すのに有利な顔と性格をしているから落とさなくてはウシシ」
「おっぱいケツでかくて俺のいい子孫残しそうウヒョッ」

という身もふたもない感じになるのです。

そのあたりは、ロマンチックで心優しい人には怒髪天で本を閉じたくなるかもしれない。

あらゆる人間の絆、利他的な感情まで、遺伝子のなせる業とされてしまうのだから。

戦前のナチスの優生学に似ている

この本の論法は、ナチスの優生論ににているところがあって

例えば脳の大きさだとか、双子のことについてナチスは研究をして人体実験を繰り返した。色んな科学的論拠(ほとんどが都合のいい似非ですが)でゲルマン人以外を劣性として、ユダヤ人やヒッピーをジェノサイドしまくった。

この新書「言ってはいけない」を読んでいたら、あのナチスヒトラーの論理とエセ科学はあながち的はずれではなかったのかも知れないなんて思わせる部分があり、そこにはゾッとするような危険を少しは感じます。

ユダヤ人が何故頭いいか

ユダヤ人のセファルディ(南欧系ユダヤ)に比べ、アシュケナージ(ロシアなど東欧系)がなぜ飛び抜けて知能が高いのか、というのは合点しました。

ノーベル賞の受賞者にアシュケナージの割合が非常に多いことは知られています。

戦前からゲットーという半収容所のような住居で東欧系ユダヤ人は生活を強いられていました。ユダヤ人は多産系で、かつその被差別環境により、血族結婚が繰り返されてきた。
そのせいで、ユダヤ系特有の遺伝病が発生し、かつ特有の知能の高さとなったというのです。なるほどお。

なぜ、ユダヤ人が忌み嫌われ虐殺されるに至ったのかも理解できます。

閉じ込められた暗い環境での血族婚姻、そして人数の多さ、ずば抜けた商才と知能、才能。回りが不気味に思うのも仕方ありません。おバカなゲットーの外のヤンキーな家族が「あいつら悪魔崇拝して、キリスト教徒の血を飲んでるからやで」と言い出せば、あほあほ遺伝子の民衆は大挙して彼らを殺戮するでしょう。

人は何故、強姦するか

また、人はなぜレイプをするのか、というくだりは、女性として読んでいて気持ち悪くなる部分もありました。

しかし、あ~あいつら(セクハラじじい)がなぜああもしつこい感じなのか納得しました。理由がわかれば私も対処や気持ちのやり場ができます。

女子高の方が、共学より女性徒の望まぬ妊娠が少ない、というデータ。その裏付けも面白かったです。確かに「仲間」「友達」の関係性が男女交際や趣味学問には強く関係しています。ヤンキーほど、仲間内の付き合いで全てを決定していきます。親の教育なんて関係ないのです。

本の終盤は、性の話に踏み込んでいて、ちょっとエロくて楽しかった。サービスページですねw

人間にとっては一夫一妻か一夫多妻がいいかの議論でした。なんと、この作者は、

人間にとっては乱婚がベストw

(人間という生き物の遺伝子にとって)であると結論づけています。これもなんとなく、納得させられました。

似顔絵:どっちの顔でショー!

また顔についての遺伝子の印象についての記述は、似顔絵描きを仕事としているので興味深く読みました。

テストステロンという男性ホルモンの一種があります。主に攻撃性や暴力性、競争意識に関わるものです。それが多いと、犯罪的な傾向に近くなるとこの本では述べています

が、一方で、高い知能と併用されたとき、ビジネスや政治に能力を発揮するのだと。

母親の胎内で、テストステロンにさらされた男子は、顔の幅が広い傾向になるといいます。人は無意識のうちに、顔の幅の広い豪胆な印象の人をリーダーとみなし選ぶのだと。

顔の幅が広く精力的な男性は攻撃的・暴力的に見えるから、ひとびとは恐怖や畏怖の念を抱く。…略…それに対して顔の細長いCEOは、高い地位についてもひとびとからリーダーとして受け入れられないために経営に失敗してしまうのだ。

ほんとかなあ?確かにそんな気も…

細い顔と太い顔、どっちがリーダー向き?!橘玲『言ってはいけない~残酷すぎる真実~』を読んだ
自民党のふたりの有力者 対照的な顔立ち

谷垣さんはほっそりしていてインテリっぽいガッキー いつ首相になるかと待っているがタイミングを逸している

石破さんは自民党内の力が強いのに首相になれそうでなれない。顔のせいか、意外にリベラルで現実的なせいか。

確かにこの人は東京大学法学部出てても総裁選でイマイチだった。当然勝つだろう次に勝つだろうという風潮なのに、いつの間にか萎んでしまったですよね。

この人は典型的な悪辣テストステロン顔(すいません)だから、次期、総理候補?!

とはいっても、元総理の福田さんなんて、細い顔だしなあ。(だから早く退任した!?)
政治家に猪(いの)首の人が多いのは偶然じゃないかもしれない。この本のとおり、遺伝子のなせる技かも!

顔相学って当たるの?

占いはともかく遺伝子の目線でこうしたアレコレを考えるのは興味深いですね。あながちデマとは言い切れません。

本気で受け止めたら自分の暗澹とした人生を想像して落ち込むので、豆知識くらいに思って話半分に読んだ方がいいかもしれません。

二元論でわざと煽る文章

このように、あの理論もこの理論も「納得させられる」という誘導?の上手さがある。
この細い顔or幅広の顔、という二極化のように、二元論の対立構造が多いのも煽り上手で危険を感じます。(人の顔は細いか広いかしかない訳でなくグレーゾーンが一杯あるからです)

女性か男性か 黒人か白人か 貧困かそうでないか こういう黒か白か、

という論法で語ると、分かりやすいので、学者のように思考深くない一般的な市民は、つい鵜呑みにしてしまうのです。小泉の郵政改革の時の誘導と似ています。

漫然とゴシップ的に楽しんで読んでたら、外国人・人種性別障害者差別の正当化、裏付けとなるような、論理にうっかり説得されそう。鵜呑みにしたら差別意識を募らせて、外国人排斥とかネトウヨっぽくなっちゃうかもw

そうしないと、こういう書籍が売れない、という現象があるから仕方ない、作者はそれを分かってて、そういう書き方をしていると思います。

心理学テストとか、あの薬指が人差し指より長いと男脳だ~とかのとかみたいに酒場で披露して注目を集めるための知識として留めて読むのがいいような気がします。

選挙は顔で投票しよう?!

頭の隅に、あ~こういうことは遺伝子のせいなんだ、とちょっと分かっていると気が楽になります。つまり占いと同じで自分にとって都合のいいとこだけ覚えておきたい。

むしろ、こういう裏付けを考えずに、感情的に大騒ぎする、大多数の古い層が今後はファシズムに通じて危険な気がします。

昨年の大阪の都構想から、イギリスといい「全員の意見を聞く」国民投票がいかに衆愚政治に直結し、進歩を妨げるかシニア民主主義と言いますが前頭葉が少々しなびてきた老人たちの差別感と偏見をストレートに反映した政治にこれからどんどんなっていくでしょう。

次回選挙は投票に迷いますが、典型的な無党派層の私は、何も考えずに今回もまたポスターだけを見て入れてしまうかも?!

幅の広い顔か細い顔かで無意識に入れてしまうのかなあ。無党派層が票を入れた政治家のデータを集めて顔の幅を測ってみるというのも面白いかもしれません。

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)