日本はベルばらのせいでアントワネット人気
マリーアントワネットは、フランス本国では稀代の悪女とされていますが、日本では大人気。
何故かというと、もちろん、あの池田理代子大先生の「ベルサイユのばら」のヒロインの一人だから。
映画館は、むんむんと熱気あふれる満席状態。ほとんどが私を含め、中年以上の女性達。
みんな「ベルばら」を読んで大きくなったのさ♪
フランス革命の数日間の物語
1789年7月14日 バスティーユが民衆の手に落ち、フランス革命が勃発。
映画はその数日間を描いている。
マリーアントワネットと取り巻きの貴族、使用人たち、それぞれの気持ちが錯綜する。
リアルな革命の恐怖感がある
華やかな宮廷ドレスを期待していたのですが、そういう感じじゃない。以前公開されたアメリカ映画「マリーアントワネット」は、キラキラした画面だったのにな。今回は、ほんまの本国フランス映画。そのせいか、臨場感がハンパない。ベルサイユ宮殿を借り切って撮影したそうだ。宮廷映画というより、緊迫する心理劇。観ていくうちにリアルさにゾクゾクしてくる。
今と違い、何かことが起こってもテレビやネットがあるわけでない。でも、カサカサと耳に聞こえてくる非常事態。じわじわとパニックになっていくさまってこんな感じ。
どうやらバスチーユでエラいことが起こったらしい。王政に対して反旗を?へえ、そうなんだ、でもとりあえず、美味しいもの食べて遊ぼうよ。スイーツ一杯あるよ、パンがなければケーキを食べようよお♪もぐもぐ。え?そうなの?民衆が?あたしたちを殺すって?286人首を切るって騒いでるよ。リストが撒かれてるの?え?あたし?あたしがそのリストに入ってるって?あなたも?うぎゃうぎゃ逃げなきゃああ~ひいいい~!
アントワネットへのレズビアン的な恋ココロ
この映画が地味な印象があるのは、主人公が朗読係という使用人だから。華やかな宮殿と貴族たちの生活を支えている召使、料理人、御者など。彼らはベルサイユ宮殿に住んでいても、貴族ではない。食べるのには困らないが、質素な生活をしている。狭くて暗い部屋に住んで傅いている。
フランス革命が起こったとき、彼らの運命も大きく動き出す。もう、使用人でいる必要がなくなるのだ。
主君を裏切って逃げ出す者。宝石を盗む者。主人公の少女シズニーはアントワネット王妃に恋をしている。彼女は、孤児で王妃への愛が全て。本を読んでさしあげる、その時間が生きがいなのだ。
暗くてエロい主人公
なんて暗い子なんだ…。本や刺繍が大好きなインドア派。不器用な感じ。そう、今でいうオタク腐女子のようなものか。私の若いときのようだ。(私は今や腐女子ではなく腐婆・麻婆豆腐だな。)陰でジト~っと片思いしている。
しかし、よく見ると、めちゃめちゃナイスバディ。オッパイがパーン!そうか、じとっとした演技をしているだけなんだな、この女優は。上手いなあ。目の端に暗い情念の炎がメラメラと燃え、言葉にならない気持ちが伝わってくる。金髪のアントワネットの方が美人の筈なのに、エロくて怖くて、目が離せない。崩壊寸前のフランス王政、それが腐乱して発酵した果物みたいになってギリギリの匂いが出てる、そういうエロさ。
宮廷にいる仕事人たちの生きざま
仕事をする人々のプライドのようなものが描かれていて、そこに妙に感心してしまった。
ベルタン夫人は王妃専属のデザイナー。革命が起こってオシャレどころではないのに、花の刺繍やデザインの心配をしている。カンパン夫人は朗読係のボス。最後まで、王妃を慰めるにはどうしたらいいのか考えている。
(職場である)宮廷には友達なんかいないわ
と叫ぶカンパン夫人。献身的に職務を遂行する一方で、部下である主人公の少女の盲目的な心酔を諌め心配するというプロ的な言動がカッコイイ。
一番の仕事人といえば、王と王妃。貴族たちが次々取り巻きが逃げ出してしまうのに、王は最後の仕事~踏みとどまる~を全うする。王妃は、逃げる人の面倒を見たり、夫や家族を助けるべく画策したり。そのキャラの描き方が「ベルばら」アントワネットに一番近かったかもしれない。