エラと劇画
数回、顔のエラについてウダウダ述べてます。お暇な方どうぞ。
面白い資料を見つけました。
「女帝」という昔の漫画ですが劇画なんです。
劇画(げきが)という言い方は最近の人はしないでしょうか。
昭和のトキワ荘時代に登場したジャンルで、大阪が発祥。マンガなんだけど、よりリアルな画風でシリアスな物語のもの。さいとうたかをさんのような画風といえば分かるでしょうか。劇画は現在もコミックの潮流のひとつです。
さらなる”ドラマ性”をーー池上遼一が切り拓いたマンガ表現と劇画の相互関係
人物をよりリアルに描くので、骨格をしっかり描くんです。もちろんエラもアゴも。
今の画風はどんどんエラが削られている
最近のアニメや漫画はエラをあんまり書かない。現在は、子どものアゴも骨格も小さくなってきているそうな。
遺伝的な要因だけでなく、最近は柔らかい食べ物が多い。なので、だんだん骨格が変わってきてるんですね。
近年の少年まんがはアニメ系の絵になりエラが少なくアゴがとがっている
昭和の劇画にはアゴやエラをしっかり描く。四角い顔の登場人物の絵を沢山見ることができます。
同じ日本人とは思えない。
昭和ネオン漫画に見るエラ
さて、女帝です。
劇画にはネオン漫画という分野がさらにあります。風俗やお水、キャバレーを舞台にした物語です。
「女帝」はその人気コミックのひとつ。これがお色気マンガな割にかなり面白く、最近はまっています。
熊本県から来た彩香という少女が銀座の女帝(クラブホステス)を目指す。
昭和的なド根性の境遇と生まれ。色々なライバルや恋を経て、やがて銀座で成功する女性の生涯を描いたマンガ。韓流や日活ドラマが好きな人はこの世界観、お好きではないでしょうか。
主人公は、健気で心がまっすぐなのは定番。そして、絶世の美女。そしてエラがない!
骨格をしっかり描く劇画でも主人公の女性にはエラがありません。
ライバルや悪役の女性の顔の作り
で、面白いことに、敵のライバルの女性たちにはエラがめちゃめちゃあるんですよ!
それを観察するのが面白くて、この漫画を読んでます。
悪役の女子たちのキャラが立ちすぎて面白い!!
ネオン劇画だから男性目線で描かれてるんですね。もちろん夜のシーンや意味不明なサービスヌード、お色気がたっぷりな上、容姿がまさにそのバイアスで露骨に描かれている。一般的な男性(保守的なおじさん)の視点。
どういう顔の女性が「健気」「美人」「正義の味方」と見なされ。どういう顔を「悪役」「下品」「ブス」と見なすか。その視点がとても分かります。分かりやすいくらい分かります。
もちろん、エラのある女性が悪役で悪辣です。
たとえば主人公を貶めるライバルホステス麗子
この麗子というホステスは悪役のホステスです。仁義に厚く心優しい主人公を貶めるため、あの手この手を使います。結局は自分で自分の首を絞めて堕ちていくスカッとジャパンな展開に。売上ナンバーワンという設定なのに顔が悪辣でエラが張りまくってます。
他にも個性的な容姿のライバルたちが登場します。次から次へと極端なエラ女子が…w
いくら骨格をしっかり描く劇画ジャンルとはいえあんまりです。主人公のライバルは妖怪のように描かれています。
一方、主人公はいつまでたってもエラがない
主人公は熊本→大阪→東京とネオンの街を出世して、月日がたち、年齢も上がるんですが、不思議なことにエラが絶対に発達しないんです。
主人公、彩香 エラがない。長年のクラブホステスのくせに恥じらいや純真さを失わない少女性のある容姿、性格。
そんなヤツいるか!と突っ込みつつ、これがオトコの望む夜のヒロインなのだw
フェミ=エラが張ってるという固定概念
先日、田嶋陽子さんがいかにもなフェミニストアイコンになってしまったことを書いたんです。
その理由に(男性が叩きやすい)容姿のエラがある、と。
「女帝」に田嶋さんがモデルであろうフェミ女性が登場します。
まさに当時、田嶋さんが論客だった「テレビタックル」を模しているのが分かります。随分失礼な表現ですなあ。(もちろんフェミニズムに対して)当時の劇画、コミック、おっさんがいかにこういう女性をフェミのプロトタイプとして見ているか分かります。男性の癒しの場所の癒しの女性を攻撃する口うるさいブサイクなオバサン、という表現。クソ腹立ちますね…。訴えてもええんちゃうかとも思いますがw
読者からさすがに苦情が出たのか、次週にはこのフェミさんと主人公は和解の胸アツ展開に。主人公の心意気に打たれ、フェミが回心するというこれまたスカッとジャパン的な…。
モテたいならこれを押さえろ!
ともかく、この「女帝」には露骨な女性の顔のバイアスが分かりやすい。
悪役=エラがある 二重あご 四角い顔 男眉 太っている
美人=エラがない 純真(そうな表情) 髪がストレート
です。
なんといういいかげんな目線のバイヤス…あほらし…。おっさんの作った勝手な好みじゃん。
とほほですが、これで何故、女性たちがモテるためにエラを削ろうとするのか分かります。
その価値観に従うのはシャクに触ります。が、婚活など意中の人を射止めたい場合、上記の欠点をカバーするファッションや髪形も必要でしょう。それも戦略です。
私は似顔絵イラストの仕事で、最近はエラを控えめに書きます。が、昔はデフォルメが好きで、しっかり骨格を強調しすぎてお客様に何度かお叱りを受けました。
「エラを削ってほしい」と。
すいません。
日本人はエラは好きじゃないですね。韓国、中国の人も。反対に欧米人は、カリカチュアの発祥の地のせいか、骨格をデフォルメするのが好きなようです。
アラブ系の人は濃い顔のわりに意外にエラを削って書いてほしがる。彼等は顔の凹凸がコンプレックスだとか。
アジア的な価値観では
エラがあったら「女帝」に出てくるような、悪い下品な女と見られる。だから、みんなエラを少なくしてほしいのです。
銀座エラ女子たちの活躍に胸アツ
モテるためにエラを取り、ダイエットに励み、宴会で恥じらいの表情で献身的に女子力を発揮するはめになり、
結局、それはまさにキャバ嬢と変わらんじゃないですか!?
職業としてはありだと思います。売れっ子のキャバ嬢やクラブホステスなら、お金がもらえ、まさに頂点、女帝を狙えます。
が、まあ、会社や合コン、親戚付き合いでそういうことをしても、一時は褒められるでしょうが、結局都合の良いように使われ、偏った保守男性やオッサンに目をつけられ、セクハラや不倫の餌食になりそうに思うんですが…。
この漫画はあの「半沢直樹」のドラマのように、分かりやすい勧善懲悪の視点で描いている。なので、容姿の描き方が極端なんですね。
ただ、えらいことストーリーは面白い。マジおもしろい。
健気な主人公はいいんですが、人気長期連載の漫画でよくあることに、性格の良い主人公って飽きちゃうんですね。
話が進むにつれ、個性的な脇役やライバルがどんどん主人公のお株を奪う感があります。結局、この漫画、叩きたいはずの悪役が顔も性格も行動も個性的すぎて面白いんです。やっぱキャラが尖ってるんです。エラ女子、悪役が断然いい!
エラの張った美女の情熱、暗躍と活躍。やはりエラは世界を席巻します。
この漫画、読んでみて!一周回って新しくてハマること請け合い!